命日
命日にしか帰らない出生地に今年も帰ってきた。
今年も例のごとくかんかん照り。
晴れ男だったからな。
帰ってくるたびに少しずつまちは変わっている。
駅前はどんどん発展している。
なんか近代的なケンタッキーが改札の真ん前にできてて驚いた。
電柱の張り紙だったり、漂ってくるゴムの匂いだったり。怪しい宗教の看板だったり。
デカいビルとかより、案外そういうしょうもないものの方が記憶に残っているもので、その辺は手付かずだったりしたのが少し嬉しかった。
正直、このまちにあまりいい思い出はないが、そういう景色を見つけると、「懐かしい」っていう、良いとか悪いとか関係ない想いがつのってきて、「地元」ってこういうことなのかなとか思う。
ヨボヨボの爺さんがやってた豆腐屋、まだやってた。
三日坊主を7セットくらい繰り返して挫折した朝のランニングで走ってたコースはなんも変わってなかった。
半開きのシャッターを潜らないと入れない脱法ドラッグの店が某政党の事務所に変わっていた。
団地の壁のくすんだ外装には、最近張り替えられたであろうオレンジのパネルは浮いて見えた。
突然転校していった友だちの家の跡地を見て、この年齢になったからこそ見えてくる事情がある。
近所の人に会うのが怖くて、家には帰れなかった。
なんで怖いんだろう。
墓掃除の手順、何度やっても覚えられない。
というか、興味がないのかもしれない。
気持ちがこもってればそれでいいと思う。
がんばりますって言ってきたので、がんばらないと。